HOME>イベント情報

シンポジウムの案内を頂きましたので掲載します。

2017年度国際シンポジウム
近世都市の常態と非常態
―水路・川・洪水―

報告者(順不同) *質疑には逐次通訳が付きます。
高橋元貴(東京大学) 江戸、本所・深川における堀川の空間動態:浚渫・堆積・浸水
菅原未宇(国際基督教大学) 16,17世紀におけるテムズ川凍結へのロンドン市の対応
岩淵令治(学習院女子大学) 江戸城の堀の浚渫について−1765年の岡山藩による堀浚いを中心に−
石神裕之(京都造形芸術大学) 遺跡からみた都市江戸の上下水道の管理
ソフィー・ジャクソン(ロンドン考古学博物館) 非常態を生み出した常態−グローバル都市における水管理の考古学
マシュー・デービス(ロンドン大学バークペック校) 嵐・洪水とロンドンの発展−1300〜1500年
ヴアネッサ・ハーディング(ロンドン大学バークペック校) ロンドンの川に橋を架ける−ロンドン橋の建設・維持とテムズ川の管理
渡辺浩一(人間文化研究機構国文学研究資料館) 江戸の水害と多摩川・利根川水系

趣旨

 私たちは、災害史研究の国際交流と比較を進めてきた。 2016年2月には東京(立川)でプレ研究会を開き、ロンドン・イスタンブル・北京・江戸における災害の概況と研究状況の相互理解を図った。同年11月にはロンドン大学歴史学研究所で開催された「都市と災害一歴史における都市の適応力とレジリエンス」において第7セッション「近世首都における災害対応」を持ち、首都であることによる災害対応の共通性、災害後の秩序維持問題の差異性が議論された。

 これらの活動を受けて、今回は、「近世都市の常態と非常態一水路・川・洪水−」をテーマにシンポジウムを開催したい。災害は社会の非常態の一種であるから、その研究を深めるためには、前提として社会の常態が明らかになっている必要がある。しかし、既存の研究は災害が意識されていないことも多く、災害史研究の観点からすれば不十分な部分もある。ここでは、比較をより実りあるものにするために、分析対象を「水」に限定し、「水」をめぐる近世都市の常態を明らかにしたうえで、その非常態も検討する。

 「水」に検討を限定したとしても、その具体的対象は幅広い。都市の「水」問題といえば、まず思い浮かぶのが多数の住民が飲む上水道システムがある。これは都市が立地する水系とは別の水系を利用する場合には大きな自然改造を伴う。また、都市内の河川と水路も大規模な自然改造の結果として存在し、重要な物資輸送路としても、儀礼的行動路としても機能する。それは同時に川の上流や上水道システムから供給される水の排水路としても機能する。

 これらの多様な機能を持つ「水」は、大雨により総体としての排水能力を超えた水を供給された場合には溢水や洪水となる。また、寒冷地では水が凍結することによって水上交通や水の供給に様々な問題も生じる。災害も含めたそうした問題が発生すれば、都市は相応の対応をすることになる。

 これらの問題を検討するには文献史学だけでは不可能である。「水」の多様な経路は考古学や建築史学によって具体的に明らかにされてきた。そこで、近世都市の「水」について、複数のディシプリンから検討することにより、比較してみたい。そのことにより、自然と人間の相互関係を歴史的に考察する手がかりを得たいと考える。


HOME>イベント情報